トラック運送業人事労務担当者が把握すべき法令とは

ポイント

トラック運送業での労務管理において、人事労務担当者は、労働基準法をはじめとする労働法や道路貨物運送事業法などの法令を参照しますが、実務的には詳細まで把握することは時間的にも難しいでしょう。実務的には、憲法、民法、その他公法とその関係性といった法律の大枠を把握しておき、詳細については個々の事例を通して理解を深めていくことが有効です。

トラック運送業の人事労務管理で関係する法令

運送会社で人事・労務管理を担当する人は、従業員の勤怠管理や事業主に代わって会社の命令する際に、その行為が法律に違反していないかを確認しなければいけません。また、そもそも、ドライバーにトラックを運転させたり、残業をさせたり、賃金を支払うといった業務上の活動の根拠は何なのでしょうか。それらの根拠は何らかの形で法令に規定されています。トラック運送業の労務管理で関係する主な法律は図表の通りです。

これら法令の細かく把握する必要は全くありませんが、どの法令が大体何について規定しているかを把握していると、専門家に頼らずに自分でも調べることができ、実務でとても役に立ちます。

事業の継続・発展には法律の知識が必要不可欠

トラック運送会社は営利を求められる組織であり、そのために様々な業務改善を行っていかなければいけません。例えば、人事労務関係であれば、モチベーションをより効果的に上げる給与制度を導入しようとしたとすると、賃金の支払いの法律である労働基準法の知識が必要です。

また、点呼や車両管理の方法をより効率的にしようとする場合には、貨物自動車運送事業法に違反しないように、同法律に精通していなければいけません。 逆に言えば、現状の業務体系は現在の法律(規制)を基に形成されているため、業務の改善や事業を発展させようとするときには必ずその法律と法律の趣旨をよく理解することが求められます。

貨物自動車運送事業法関係

貨物自動車運送事業法関係、道路運送車両法関係及び道路交通法関係が該当します。自動車(軽自動車を除く)を使用して他人の荷物を運び、運賃を得るトラック運送事業は、国土交通省から許可をうけた事業者以外は営んではいけません。

これらの法律は、普通の人は行うことができない公共の道路を使用して、他人の荷物を運び運賃を得るという運送事業を営むことができるのだから、社会の安全や公益のために、事業者が守らなければいけない規則を規定しているものです。貨物自動車運送事業輸送安全規則では、労務管理に関係する項目が具体的に規定されています。  運送事業を運営する上で中心となる法律であるため、人事労務担当者であっても基本的なことは把握しておきましょう。これらは運行管理者資格の科目でもあります。

労働法:労働基準法、労働契約法など労働関係の法律

労働法とは単体の法律を示すのではなく、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、労働組合法など、労働分野に関連する法律をまとめて労働法と呼んでいます。

改善基準告示とは、自動車運転者に特化した労働時間基準

トラックやバス、タクシーなど運送業において改善基準告示とは、正式には旧労働省による「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の告示(以下、改善基準告示といいます。)のことを指します。自動車運転者の時間規制については、交通事故の防止の観点から、連続運転時間や勤務間インターバルなどを確保する必要があります。

昭和41年までは、自動車運転者の労働時間についても、他の一般業種と同様に労働基準法に基づき監督されていました。この当時、自動車運転者の労働条件の改善、交通事故の激増への対応を図るため、労働基準法に加えて、労働省労働基準局により最初の労働時間に関する改善基準が告示されました(昭和42年2月9日 基発139号、2・9通達といいます)。

しかしながら、2・9通達は実作業時間を中心に規制した規制であり、手待ち時間等実作業時間以外の時間が多い自動車運転者について、さらに昭和54年、拘束時間規制を中心とする新たな改善基準が策定されました(昭和54年12月27日 基発第642号、27通達といいます)。

この後、法定労働時間の一週48時間から44時間への短縮等への対応のため、平成3年、平成4年、さらに平成9年に改正が策定され、現在の1か月拘束時間293時間という労働時間の上限に至っています。改善基準告示は法令ではなく飽くまで行政通達ですが、自動車運転者についての労働時間基準として、監督・指導に参照され、事実上の限度基準となっています。

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