試用期間なので解雇、は問題ないか?

query_builder 2024/11/29
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ポイント:試用期間の解雇については、本採用後よりも解雇の自由が認められる範囲が大きい程度に留まり、容易に解雇できるというのは誤った認識です。正社員を採用するにあたっては、試用期間はもとより、解雇予告が不要な試用期間2週間を目途に本採用を見極めます。

試用期間とは

 試用期間の内容については法令では明確にされていませんが、一般的には、採用した者の適性を判断、評価するための期間とされています。判例においても、試用期間中は解雇権留保付の労働契約、つまり、雇用関係は成立しているが、解雇権を留保している期間であるとされています(三菱樹脂事件)。

 ただし、この留保されている解約権がどこまで認められるかについては、特別に不適格事項が認められるかに留まります。トラック運送業における不適格事項とは、例えば明らかに安全運転への配慮に欠けること、業務に必要な体力や集中力の不足、業務指示に従えない、荷主への態度が悪い、などが挙がられますが、いずれもその程度や訓練量等を考慮しなければいけません。従って、試用期間中の解雇については、具体的に基準を示すことが難しく、個々のケースを慎重に判断する必要があります。

14日以内だと解雇予告手当不要

 通常、試用期間は3カ月とすることが多く、一般的なトラック運送業においても3カ月程度が妥当だと考えられます。トラック運送業においては、特に未経験者を採用した場合には、1週間ほど業務を経験して、本人から辞めてしまうケースがみられますが、早々に見切りをつけてもらうことは会社にとっても悪いことではありません。

 問題は不適格事項の解消が明らかに難しいにもかかわらず、本人に継続の意思がある場合です。この場合には、会社から解雇の旨を申し出ることになります。解雇は30日前までに解雇予告をしなければいけません(労基法第20条)。ただし、試用期間中14日以内であれば解雇予告は不要です(労基法第21条)。

 したがって、焦って結論を急ぐことは問題ですが、会社にとっても試用期間開始から14日の判断は一つの目安と捉え、14日が過ぎた場合には、本採用時期が判断の目安となります。

試用期間の延長

 採用した人材の不適格事項の解消が試用期間の満了を迎えても残る場合もあります。試用期間を延長することも可能ですが、試用期間を延長することは労働条件の1つであり、これには就業規則上の根拠が必要です。

また、延長や延長期間には合理的な理由が必要であり、どこが解消されないので延長することや、どう改善すればよいのかを伝えなければいけません。また、試用期間満了前に通知するなど丁寧に対応することがトラブルを未然に防ぐ手立てです。



採用時の健康状態の確認、運転業務に支障のある疾病

 ドライバーの健康状態の確認は運送事業者の義務ですから、ドライバー採用にあたっては、面接時に既往歴や現状の健康状態についてヒアリングをする、入社時にアンケートを実施することは大切です。ただし、既往歴を含む健康状態については、個人情報保護法における要配慮個人情報であり、明らかにドライバー業務に影響しない事項に関しては聞くことはできません。

事故の経歴

 国土交通省告示によれば、運送事業者は採用時に新人の自動車事故経歴を把握すること、としています(国土交通省告示第1366号5の(1))。大手運送会社では、採用時に無事故証明書または運転経記録明書の持参を要求するようですが、採用の事情から中小規模の会社ではそこまでは求めたくても求められない状況にあります。

 ドライバー適性の判断については、適性診断などの方法もありますが、実際には事故歴の把握は大変重要です。前述の書類が難しい場合には本人にヒアリングか、前に勤めていた会社から聞くしかありません。入社後に運転記録証明書を取得し、本人が告知した内容と異なる場合には、本採用について検討する必要があります。

 ちなみに、採用後の運転記録証明書の取得について、運転記録証明書はドライバーの委任状がないと取得できませんが、特別な理由のない限り、ドライバーが応じる義務があると考えられます。

社労士との発展


東京で活動する社会保険労務士(社労士)は、試用期間や本採用に関する労働法の専門知識をもとに、企業にとって非常に重要な役割を果たしています。特に試用期間は、労働者の適性を見極めるための期間として、多くの企業が設けているものですが、その対応や運用には慎重さが求められます。東京の企業は多様な業種と規模があり、それぞれに合わせた法的アドバイスが必要です。ここで社労士の専門知識が大いに活躍します。


試用期間中の解雇権留保は、例えば三菱樹脂事件のように判例上も認められていますが、解雇権の行使は特定の不適格事項が認められた場合に限られます。東京の企業は特に多様な労働環境を持つため、不適格事項の判断やその対応には専門的な知識が求められます。社労士は、労働基準法や関連する規則に精通しており、企業が法に沿った対応を行えるよう指導します。


また、試用期間中の解雇に関して、労働基準法第21条に基づき14日以内であれば解雇予告が不要とされる点も重要です。東京の企業は、この14日間を一つの目安として運用することが多いですが、この短期間の中で労働者の適性を正確に評価するためには、社労士のサポートが必要不可欠です。社労士は、この試用期間の制度を企業が適切に活用し、トラブルを未然に防ぐための助言を行います。


試用期間が満了しても不適格事項が解消されない場合、社労士は就業規則に基づいた試用期間の延長についても指導します。東京の企業は法的根拠を明確にし、合理的な理由をもって対応することが求められます。社労士は、その延長手続きが法に適合するようサポートし、企業が労使関係において公平な対応を保てるよう支援します。


採用時の健康状態の確認や事故歴の把握についても、東京の運輸業などでは重要な課題です。社労士は、個人情報保護法に配慮しつつ、企業が適切な手順で情報収集を行い、法令に沿った採用プロセスを確保するようアドバイスします。国土交通省の告示や厚生労働省の通達に基づくガイドラインに従い、社労士は企業が法令違反を防ぎ、労働環境の改善を図るための助言を提供します。


このように、東京で活躍する社労士は、試用期間から本採用に至るまでの法的サポートを通じて、企業と労働者の発展を支える重要な存在です。


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H&Y社会保険労務士法人

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