法令を調べる時のポイントとは

query_builder 2024/11/22
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人事労務担当者は労働法をはじめ様々な法令に触れる機会が多い職種です。法律の体系や構成について知識があれば実務での法令の活用が効果的です。情報源についても、ウェブサイトや専門家を活用して、正確でコストパフォーマンスのよい法令の活用が大切です。

法令の体系

運行管理試験などで労働基準法や貨物自動車運送事業法などの法律を学んで行くと、法律、規則、通達や告示などという言葉が出てきます。

具体的には、憲法、民法、労働基準法、労働基準法施行規則、貨物自動車運送事業法、貨物自動車運送事業法安全輸送規則、改善基準告示、国土交通省告示、厚生労働省通達などです。

法律がどんな形式であるかの体系を大まかに理解しておくと、調べる際に混乱を避け、効率よく目的を達成することができます。

ある法律が作られた時に、細かいルールまでを一つの法令に盛り込んでしまうと膨大な量になってしまいます。また、施行の後に具体的なルールが明確になることもあります。

そこで、法律では条文は抽象的な記述にしておき、規則などでより具体的な内容を定めるという形式になっています。

例えば、労働基準法には労働基準法施行規則が、貨物自動車運送事業法には貨物自動車運送事業法安全輸送規則があるように、法律と施行規則の関係が構成されています。

~法や~規則を法令といいます。法令は制定する機関によって図表7のような体系に分類されます。また、法令や通達等は、厳密には決められていませんが、憲法>条例>政令(法律)>省令の優先順位がつけられ、矛盾が生じないように構成されています。

告示や通達は法令ではないため法的な拘束力を持ちませんが、具体的な運用が示され、実務的には大きな影響を受けます。また、法令や告示と異なり通達は行政官庁が所管の機関へ発する文書のため原文は入手しにくいですが、一般的なものはインターネットでも検索すれば入手できます。


法文の構成

 法律の文章、法文は、条、項、号に分かれて構成されています。会社で定める就業規則なども一般的には法文に従って記述されます。下図は労働基準法第14条の法文です。



法律の改正について

 法律が制定もしくは改正され、法律の効力が一般的に発動することを「施行」といいます。また、法律は国民に周知されなければならず、これを「公布」といいます。一般的には公布日には時間が掛かるためと施行日は一定期間の間を置きます。例えば、2022年10月1日から、いわゆるパパ産後育休が始まっています。これは育児介護休業法の改正が施行されたことによるものですが、この法律が改正されたのは2021年6月です。

 法律の改正への対応には、就業規則の変更や周知、業務内容の変更が生じることがあります。改正対応をするときには、施行日を基準にして、そこから逆算してこれらの対応スケジュールを組まなくてはいけません。




民間、行政機関、裁判所、それぞれに法律に対する解釈がある

法律は国会で作られて、民間事業者や行政機関が法律に基づいて運用します。事業者は、労働基準監督署や運輸支局など行政機関から指導を受けることが多いため、行政が法律を作っているかのような錯覚がありますが、それは違います。行政機関が法律に基づいた運用について指針や基準を示しているのです(規則については行政機関でも制定可能です)。

また、裁判所は行政機関とは独立して法令を解釈し、その運用の適法性について判断します。つまり、行政機関の法律についての運用は絶対的なものではなく、民間の事業者は、運用の1つとして捉える視点を持つことが大切です。運用について適法性を議論する際に判例を重視するのはそのためです。

特に新しい法律が施行された際には、裁判によってどう判決されるかが大変注目されます。最近の例では、同一労働同一賃金についての取扱いが2つの最高裁裁判で注目されました。

同一労働同一賃金は、具体的には短時間・有期雇用労働法第にて、不合理な取扱いを禁止する条文によって規定されていますが、条文は判断要素を示すのみで抽象的であり、これが具体的にどのような取扱いが不合理となるかを司法がどう判断するかは、行政や民間の今後の運用を決めます。

ハマキョウレックス事件では、正社員と有期労働社員との間で、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、定期昇給及び退職金について個々の賃金の性質に照らして判断するという、不合理な取扱いの具体的な違反内容が示されています。

この最高裁判決を受けて、厚生労働省は同一労働同一賃金の取扱いを定めています。この同一労働同一賃金のように、改正内容によっては行政が示すガイドラインに留まらず、改正に関する事項で争う判例を把握しておくことも大切です。

また、日本では地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の三段階で裁判が行われます。判例は司法の法律解釈の前例となり参考としますが、都合のよい解釈だからといって地方裁判所の判決を採用しても、一般的ではない場合もあるため、原則として最高裁判決を優先して参考した方がよいでしょう。




ウェブサイトの注意点、e-Govを活用する

 現在は、法令はもちろん通達や告示までがインターネット上で公開されており、簡単に入手することができます。以前は行政に情報開示請求をして閲覧する必要があったそうです。インターネットは大変便利ですが、玉石混交で誤った情報もあるため、情報の信頼性は常に確認することが大切です。誤った情報による損害を補償してもらうことはできません。

 法令を検索する場合には、政府が提供する「e-Govポータル」の法令検索サービスが使い勝手もよく、常に最新の法令が更新されているため安心して使用することができます。

 信頼性を確保する手段としては、公的機関や弁護士等専門家が提供しているものを参照することや、複数のサイトを比較するなどが考えられます。また、更新時期が古い場合には法改正に対応していないこともありますので、その点にも注意しましょう。




社労士との発展

 東京において、社会保険労務士(社労士)は、企業と労働者の間で重要な役割を果たしています。社労士は労働法令や社会保険制度の専門家として、企業が法令に基づいて適切に運営されるよう支援を行い、労働者の権利が守られる環境作りをサポートします。特に東京のような大都市では、多種多様な企業が存在し、それぞれが異なる業務形態や労働環境を持つため、社労士の知識と経験が必要不可欠です。

労働基準法や社会保険制度の改正は頻繁に行われます。東京の企業にとって、新しい法律や施行規則に対応することは大きな課題です。例えば、最近の育児介護休業法の改正や同一労働同一賃金の施行は、多くの企業にとって業務内容や就業規則の見直しを迫るものでした。こうした法改正に伴う対応には、社労士が専門的なアドバイスを提供し、スムーズな運用を可能にします。

また、東京では、運輸業やサービス業など多様な業種が展開されています。これらの業種では、貨物自動車運送事業法や改善基準告示といった特定の法令が適用されることが多く、それに基づいた労働環境の整備が求められます。社労士は、これらの法律に精通し、企業が適法に運営されるようガイドします。さらに、厚生労働省が発する通達や告示も業務に大きな影響を与えるため、社労士は最新の情報を追い続け、企業へ適切なアドバイスを行います。

特に東京に拠点を持つ企業は、その規模や業種の多様性から、法的な解釈が異なる状況に直面することがあります。社労士は、裁判所の判例や行政の指針を考慮し、適切な対応策を提案します。例えば、同一労働同一賃金に関する最高裁の判例は企業にとって重要な参考となり、社労士はこうした司法の判断をもとに労働条件の整備をサポートします。

インターネットの普及によって、法令や通達の情報は容易にアクセスできるようになりました。東京の社労士は、e-Govポータルなど公的な情報源を活用し、最新の情報を収集しています。情報の正確性を確保するために、信頼性の高い公的機関や専門家が提供する情報を基に、企業にアドバイスを行います。これにより、企業は正確な法令に基づき、適法に運営されるよう支援されるのです。

社労士は、東京のビジネス環境において、労働法令や社会保険制度の専門家として企業と労働者の架け橋となり、持続的な発展を支える役割を果たしています。



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H&Y社会保険労務士法人

住所:東京都稲城市東長沼1126

電話番号:042-401-5430

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